3カ月続けて虫歯になりにくい歯に キシリトールってこんなにすごい!
「キシリトール」と聞くと、砂糖の代わりになる甘味料で虫歯になりにくい、という程度ことは多くの方がご存知ですが、実はそれだけではないんです。今回は、もっと深いキシリトールの話です。
【目次】
1. そもそも「キシリトール」って何?
1-1 キシリトールは天然由来の甘味料
1-2 虫歯のメカニズム
1-3 キシリトールの優れた特性
2. 「歯科専用」の製品を選びましょう
3. 習慣化することで、プラークが付きにくく
4. 3カ月続けることで虫歯になりにくい歯に
5. まとめ
1. そもそも「キシリトール」って何?
1-1 キシリトールは天然由来の甘味料
キシリトールは、主にシラカバやカシに含まれている天然素材を成分にした甘味料で、その成分はイチゴなどのベリー類や、レタスやホウレンソウ等にも含まれています。砂糖と較べ、カロリーは25%も低く、しかも糖度は変わりません。また、溶ける時に熱を吸収するので清涼感もあります。WHO(世界保健機構)でも安全性の高い食品添加物として認められてり、日本では、1997年に旧厚生省が食品添加物として認めています。
▲白樺の木
1-2. 虫歯のメカニズム
ちょっと話が逸れますが、どうして虫歯になるか、ご存知ですか?
歯の表面にネバっとして黄色っぽいものがついていれば、それは食べかすではなくプラーク(歯垢)かもしれません。プラークは細菌の塊です。細菌の中の虫歯菌は、食物に含まれる糖分を栄養源にして代謝産物(生体内で物質が化学変化を受けて生成する物質)として酸を出します。この酸が歯を溶かしてしまうのが、虫歯の始まりになります。糖分が多いほど虫歯菌が酸を多く出すことになり、歯の表面が溶けていきます。これを「脱灰(だっかい)」と言います。食物を摂ると、脱灰が起こりますが、通常は唾液の働きで口内は中和され、溶かされた歯も補修される「再石灰化」が起こります。食物を口に入れた後は、この繰り返しが起こっているのです。
▲再石灰化には唾液が重要な役割を持つ
虫歯と違って、酸性の飲食物や胃液等によって歯が溶かされる疾患を「酸蝕症」と言います。以下の酸蝕症のコラムの中で、脱灰〜再石灰化のメカニズムを詳しく書いていますので、こちらもご覧ください→「歯が溶け出す疾患「酸蝕症」を甘く見ていませんか?」
1-3 キシリトールの優れた特性
キシリトールは糖分ではなく、「糖アルコール」と呼ばれるものの一種です(アルコールという名称ですが、お酒ではありません)。糖分が含まれないので虫歯菌が代謝産物を出せない、従って虫歯菌は酸を作り出すことができず、虫歯に発展しない、というメカニズムになります。
甘いものを食べることが習慣化して、なかなかやめられないとうこともあります。無理にやめようとしてストレスになるより、甘いものをキシリトールで代替するというのも一つの方法です。
このように、有用な物質であるキシリトールですが、糖アルコールを過剰に摂取するとお腹を下す可能性がありますので、1日に必要な量(5〜10g程度。後述)を大幅に超えないように注意しましょう。
2. 「歯科専用」の製品を選びましょう
キシリトール製品を購入の際、ちょっと気にしていただきたいのが、どうせ買うなら、甘味料としてキシリトール100%のものを買った方がいいということです。
1日に必要なキシリトールは、5〜10gとされており、キシリトールの含有率次第では、食べる量(個数)が増えてしまいます。下の表にありますように、キシリトール含有率が100%のものであれが、1日にガム4粒程度で必要量に届きます。キシリトール含有率100%のものには、パッケージに「歯科専用」と表記があります。そうでないもの、例えばスーパーやコンビニに並んでいるものは、キシリトール含有率が50%を切っているものがほとんどです。これだと、1日に8粒も食べなくてはならず、現実的ではありません。
キシリトール製品にも、グミやタブレット等の形態がありますが、唾液が最も出るという点でガムタイプが効果的です。ただ、3歳以下のお子様は十分にかむのが難しいのでタブレットで構いません。キシリトール製品を口にする習慣をつけてあげてください。ちなみに、キシリトール入りのチョコレートもあり、チョコレートを食べる習慣がある方には代替品になります(割高感は否めませんが)。
▲様々なキシリトール配合製品
3.習慣化することで、プラークが付きにくく
キシリトールを習慣的に摂り続けていると、プラークの強固な汚れが歯ブラシで落としやすい汚れに変わってきて、プラークが付きにくくなるというメリットもあります。
子供の歯の質は大人に比べて弱く、ちょっとの酸にも溶けやすい、つまり虫歯になりやすいということが言えます。大人と子供で同じ分量の糖分を摂ったとしても、子供の方が虫歯になるリスクが大きいので、子供には大人以上に積極的にキシリトールを摂る習慣をつけてあげることをお勧めします。
唾液は、かむことによって唾液腺が刺激されて分泌するものですが、子供はかむ力も大人には劣るため、唾液の量も少ない傾向にあります。そういう意味でもキシリトール製品の摂取が効果的です。
キシリトールのさらに効果的な摂り方として、1日に必要な量を一度に摂るよりは、分散して、それこそ毎食後に摂ると、その都度中和を助けてくれます。
味がなくなっても、唾液分泌のために、5〜10分はかんでいただきたいと思います。
タブレットは、かまないで口の中にとどめて舐めてもらった方が効果的です。
4. 3カ月続けることで虫歯になりにくい歯に
キシリトールの摂取を毎日の習慣にしていると、プラークが柔らかくなって落としやすくなります。そして、3カ月くらい続けていると、虫歯になりにくい歯になります。
キシリトールの効能は、子供に限ったことではありません。忙しい方、妊婦さんにもお勧めです。
5. まとめ
このように、キシリトール配合のガムなどを適切に利用することで虫歯の予防に一定の効果が認められますが、虫歯が治るということはありません。また、歯磨きを省略できるわけでもありませんので、歯磨きは、引き続きしっかり行いましょう。