歯の根管治療(根っこの治療)の品質が、歯の寿命を決定づける
歯の根っこの治療は、神経を取った後の歯の寿命を決定する重要なプロセスです。
治療の仕方やクオリティが、治療後に歯が残るか否かの分かれ道になることもあります。
【目次】
1. 根っこの治療の目的と成功の要因
2. 根っこの治療の実際
3. 中断した場合のリスク
4. 根っこの治療が終わったら
5. まとめ
1. 根っこの治療の目的と成功の要因
1-1 根っこの治療の目的
歯の根っこの管を根管といい、根管の中には神経があります。この神経に虫歯菌が到達をすると、虫歯菌ごと神経を取り除き、根管内を消毒し無菌状態にして、薬を詰め細菌が再び入り込まないようにしなければなりません。
根っこの治療の目的は次の2点に集約されます。いかにこれを実行できるかで結果が大きく違ってきます。
1) 感染源の除去:虫歯の治療、根管拡大・洗浄
2) 再感染の防止:根管への薬剤の充填、土台、被せ物
1-2 根っこの治療が成功する要因
根っこの治療の成功率は、欧米の約9割に対し、日本は5割というデータがあります。
日本では患者様が保険の範囲内での治療を希望することが多く、根っこの治療にかける費用は数千円程度です。これに対し、欧米や一部のアジア諸国でも数万円から10数万円と、日本とは大きな開きがあります。それは、治療にかける歯科医師の労力、材料、設備の差であったりします。
治療を成功させる要因はいくつかありますが、特に重要なのが次の点です。
1) ラバーダム
ラバーダムとは、歯にかけるゴムマスクのことで、これの使用により、治療箇所に唾液が侵入するのを防げます。ラバーダムの使用は欧米では常識で、使用することを法で義務付けている国もあります。日本でこれを使用する歯科医院は5%以下と言われていますが、オーラルビューティークリニック白金では、根っこが細菌感染するのを防ぐため、保険適用外ですが、ラバーダムの使用をお勧めしています。
▲ラバーダムを使った治療シーン
▲ラバーダムの装着イメージ
2) マイクロスコープ
歯の根っこには、太いものが1〜4本程度ありますが、その通り道が、マイクロスコープという顕微鏡を使うことにより、肉眼では見えないほど小さな部分も拡大して鮮明に見ることができ、診断のクオリティが上がります。
▲マイクロスコープを使用した治療シーン
(オーラルビューティークリニック白金)
3) 土台、被せ物
根っこの治療後、土台、被せ物の品質や選択により、歯が残せるか抜歯になってしまうかの分かれ道になることもあります。
2. 根っこの治療の実際
根の治療とは、細菌によって汚染された根の中を針金のようなヤスリでこすり落として根の中を消毒し、薬で密閉して無菌状態にする方法です。少しでも細菌に侵された根が残ってしまうとそこからまた細菌が増え、再発を繰り返す原因ともなります。歯の根に薬を入れた後は、根の先まで薬がしっかりと入っているかレントゲンで念入りに確認をします。
▲根管治療のプロセス
2-1 根の治療は感染源除去に時間がかかる
根の治療は、下に挙げるように、様々な理由から時間がかかりがちです。
2-1-1 根管は3次元的で複雑
①歯によって根管の数が異なる
歯には、1~4本の根管が存在します。歯根を傷つけないよう慎重に全ての根管の感染物を除去するには時間がかかることがあります。
②根管の形が様々
根管が細かく枝分かれをしていたり、網目状になっていたり複雑な形をしていると、治療は困難になります。器具が届かない部分は薬の力を使って消毒していくことになります。
③歯根が曲がっている
曲がった歯根には器具を真っ直ぐ入れることができないため、より細かく慎重な器具の操作が必要になります。
④直視できない
直接目で見えない細かい部分の目に見えない細菌を除去するには、手探りの器械的な除去方法と、歯に悪影響のない程度の薬剤の力を使っていきます。
⑤感染が広がっている
器具を使って歯の内部をきれいにしても、歯の周りの組織まで感染が広がっていると直接処置ができないため、体の抵抗力にも頼って回復を期することになります。
▲根管が複雑な形をしていることも
2-1-2 根管治療が2回目以降の場合は困難な治療になる可能性
一度プロの医師が治療しているにも関わらず完治しないということは、難易度の高い治療であることが多いと言えます。難易度を高くしているのは、2-1-1で挙げた理由が挙げられるため、この原因を突き止めて治療をしていく必要があります。
2-1-3 痛みがとれるまでに時間がかかることも
上記のような理由で感染除去に時間がかかるのと同時に、感染除去ができなければ痛みは続きます。また、違和感がある場合は、根の先の骨が溶けてしまっているので、骨が再生するのに個人差はありますが、おおよそ1カ月はかかります。
2-1-4 保険制度の課題
使用できない薬剤・器具があるため、効果が薄くなったり、時間がかかってしまったりする場合があります。そういった制約を排除して、自由診療をするのも選択肢の一つです。
3. 中断した場合のリスク
①抜歯の可能性
治療が最後まで終了しないままでいると、歯が補強されずもろい状態のため割れやすくなります。歯が割れると歯として機能しなくなり、場合によっては抜歯になることもあります。
②菌が入る可能性
仮歯が取れたり割れたり、仮蓋が取れたり隙間が空いたりして、空いたところから菌が入り込み、今までの治療が無駄になったり、さらにひどくなったりします。
③費用増の可能性
仮歯が取れたまま放置をしておくと、その周りの歯がずれてきたり、噛む相手の歯が伸びてきて、いざ被せ物をしようとした時に被せられなかったり、噛み合わせがずれてしまったりします。その結果、余計な時間と費用がかかる場合があります。
4. 根っこの治療が終わったら
根の治療を行うと歯は筒状になり、噛み合わせの力などでより割れやすくなります。そこで土台を立て、歯を覆うように被せ物をつけることで歯の補強をし、歯を長持ちさせることができます。
いずれにせよ、歯を長持ちさせるためには、定期的な検診も重要になってきます。
詳しくはこちら『被せ物の種類と選ぶ基準』をご覧ください。
5. まとめ
繰り返しになりますが、根っこの治療が十分でないために、後になって痛みが出たり、最悪の場合には抜歯に至ったりすることもあります。マイクロスコープを利用した精密な根管治療の方法も確立されており、検討されてもいいと思います。
【目次】に戻る