咬合性外傷の原因・症状・治療
歯周病は多くの方がご存知の歯科疾患ですが、原因が細菌によるものだけではないのです。もう一つの原因についてご紹介いたします。
1.咬合性外傷って何?
咬合性外傷という言葉を初めて聞いた、と言う方は多いと思います。歯に付いている歯垢が原因の歯周病ではなく、歯にかかる力が大きすぎて発生する歯周病の形です。噛む力が大きいとか、硬いものを食べる習慣によって歯の土台となる部分の歯根膜という組織がダメージを受けてしまうということです。ダメージとは、歯根を支える歯根膜という線維が切れたり、土台となる骨が緩んでしまうということなのです。
2.噛み合わせが歯周病の原因になる
2-1歯ぎしり
歯ぎしりや食いしばりの癖があると、歯のすり減りなどによって噛み合わせのバランスが崩れたり、無意識に強い力をかけることで歯周組織にダメージを与えます。
2-2被せものや詰めもの
噛み合わせは非常にデリケートで、20~30ミクロンを感じると言われます。例えば、一般的な粉末茶は40~80ミクロン、抹茶は10~20ミクロンと言われています。これほど繊細であることがお解りいただけると思います。
2-3歯並び
歯並びは見た目やブラッシングのしやすさだけではなく、噛み合わせにも影響を与えます。受け口や、前歯が噛み合っていなく奥歯だけで噛んでいるオープンバイトなどでは、奥歯の負担が非常に大きくなります。奥歯に噛み合わせの合わない被せ物をすることで負担が大きくなり、ひどい歯周病の症状が出ることがあります。
3.咬合性外傷の症状
3-1噛むと痛い
最初のうちは、時々なんとなく痛いなという程度ですが、症状が進んでくると噛もうとしても痛くて噛めなくなるほどになります。
3-2歯が揺れる
奥歯は垂直方向からの力には比較的強いのですが、噛み合わせが悪いことにより横からも大きな力を受けると、歯を支えている歯槽骨が吸収されて揺れてきます。骨は硬いというイメージがあるかもしれませんが、実際にはスポンジのようになっています。スポンジも力で押されれば網目状が潰れるので、支えることが困難になります。
3-3歯茎が腫れる
炎症により歯茎も腫れてきます。写真は少し解りづらいかもしれませんが、赤く炎症を起こしている歯茎と、噛み合わせを調整して力を取り除くことで炎症がなくなり回復した歯茎(歯肉)です。
4.まとめ
歯は、歯根と歯槽骨を繋ぐ「歯根膜」という線維性結合組織のおかげで、簡単に抜けることはありません。また、歯根膜は噛んだ時の力を調整する大切な役割もあります。生理的な範囲を超える強い力がかかると歯根膜の中の血管が変性して消えてしまい、線維がプチプチとちぎれてしまいます。咬合性外傷は細菌の侵入がないので、噛み合わせによる大きな力を取り除いてあげることが出来れば歯根膜の再生は可能になります。それには、修復が完了するまでは年単位の時間も必要になります。細菌による歯周病の場合は、炎症がひどくなるので歯根膜が吸収されて消滅し、やがて歯が抜けてしまうのです。一口に歯周病と言っても、何が原因かにより治療法と経過が違ってきます。いずれにしても、きちんと歯科医院で検査と診断を受けて、歯をダメにしないようにしたいですね。